将来の作戦において軍隊が物質的な劣勢を覆して勝利するための新たな戦い方として、「時空戦」というものがあります。時空戦は、古典的な機動戦の理論を発展させたものであり、両者には共通点もありますが、いくつかの重要な違いがあります。
共通点
- 敵の重心への攻撃:機動戦と時空戦は、どちらも敵の重心(戦闘力の源泉)を攻撃することで、敵の戦闘力を奪い、勝利することを目指します。
- OODAループの活用:OODAループ(観察、状況判断、意思決定、行動のサイクル)を重視し、敵よりも早くサイクルを回し、優位に立つことを目指します。
- 奇襲の効果:敵の意表を突く奇襲の効果を重視し、敵の計画や行動を混乱させることで、優位に立つことを目指します。
相違点
機動戦 | 時空戦 | |
---|---|---|
時間の概念 | 敵との接触後、OODAループを高速化することで、意思決定の優位性を獲得し、勝利を目指す。 | 敵との接触前の「過早化」を重視し、敵の重心が顕在化する前に攻撃することで、主導権を握り、勝利を目指す。 |
攻撃目標 | 敵の顕在化した重心(戦闘力の源泉) | 敵の潜在的な重心(将来の戦闘力の源泉) |
撃破メカニズム | 主に「破壊」「崩壊」 | 「破壊」「崩壊」に加え、「見当識妨害」「無効化」を加えた多角的なアプローチ |
作戦の焦点 | 敵との接触後の戦闘 | 敵との接触前の段階での敵の企図や能力の無力化 |
まとめ
機動戦は、敵との接触後の戦闘において、OODAループの高速化や奇襲によって敵の重心を攻撃し、勝利を目指す戦い方です。一方、時空戦は、機動戦の概念をさらに発展させ、敵との接触前の段階から敵の潜在的な重心を攻撃し、主導権を握ることで、敵の戦闘力を奪い、勝利を目指す戦い方です。時空戦は、現代戦における情報技術の発達や戦場の複雑化に対応するために、より多角的で先制的なアプローチを重視しています。
令和6年6月16日
運営責任者 勝浦 悠太