テラ・ラボの長距離無人航空機運用コンセプトと航空管制区域飛行実現に向けた課題
本日、テラ・ラボが航空管制区域における長距離無人航空機の運用コンセプト(ConOps)を策定したというニュースに接した。無人航空機、特に固定翼機の航空管制区域への進出は、航空管制の安全性向上、災害対応の迅速化、物流効率化など、多岐にわたる分野への貢献が期待される。
テラ・ラボは、「テラ・ドルフィン」と名付けられた長距離無人航空機を開発し、災害発生時における情報収集、広域監視、物資輸送などを目的とした運用を目指している。2019年から福島県において、衛星通信を活用した長距離無人航空機による三次元モデル生成システムの実用化に向けた研究開発を進めており、2021年には福島県南相馬市に研究開発拠点「TERRA LABO Fukushima」を設立している。
しかし、無人航空機の航空管制区域における飛行は、技術的、制度的な課題を孕んでいる。現在の航空法では、無人航空機の飛行高度は原則として150m以下に制限されており、有人航空機との空域分離が図られている。これは、無人航空機の制御システムの信頼性、有人航空機との衝突回避、地上への落下リスクなど、安全面への懸念が根強いからである。
テラ・ラボは、これらの課題を克服するため、有人航空機と同様の無線システムを搭載し、航空管制官との音声通信による航空交通管制(ATC)の実現を目指している。また、無人航空機の遠隔操縦システム(RPAS)の高度化、国際基準への適合など、安全性の確保に注力している。
ConOps(Concept of Operations)は、システムの運用構想、役割、責任、運用手順などを明確化することで、関係者間の共通認識を形成し、円滑な運用体制を構築するための概念である。テラ・ラボは、ConOps策定を通じて、無人航空機の航空管制区域における飛行実現に向けたロードマップを明確化し、関係機関との調整を円滑に進める狙いがあると考えられる。
テラ・ラボは、災害対策の分野で培ってきた知見を活かし、民間技術を防衛分野へ転用する取り組みも進めている。防衛省・自衛隊との連携を通じて、アジャイル開発手法を導入し、2024年4月には装備品製造等基盤事業者として防衛大臣の認定を受けている。
無人航空機の活用は、災害対応、インフラ点検、物流、農業など、様々な分野で期待されている。テラ・ラボの取り組みは、無人航空機産業の発展に大きく貢献する可能性を秘めていると言えるだろう。
今後、テラ・ラボは、愛知県営名古屋空港に飛行試験開発拠点と危機対策オペレーションセンターを整備し、平時・有事のデュアルユースを実現できる体制を構築する計画である。東日本大震災の復興にも貢献できるよう、雇用創出にも積極的に取り組む姿勢を示している。
無人航空機の社会実装は、我が国の産業競争力強化、社会課題解決に繋がる重要な取り組みである。テラ・ラボの挑戦を応援するとともに、今後の動向に注目していきたい。