ドローン物流の社会実装に向けた挑戦:愛知県における実証実験
無人航空機(ドローン)の利活用は、物流、インフラ点検、災害対応など、多岐にわたる分野で期待されている。本日、愛知県が推進する「あいちモビリティイノベーションプロジェクト」の一環として、プロドローンが実施する本土離島間物流の実証実験に関する報道に接した。
愛知県は、2023年5月に「あいちモビリティイノベーションプロジェクト『空と道がつながる愛知モデル2030』」を始動し、ドローンや空飛ぶクルマなどの次世代モビリティの社会実装を加速させている。このプロジェクトは、「革新事業創造戦略」に基づく官民連携プロジェクトの第1号であり、自動運転車などとの連携による新たなモビリティ社会「愛知モデル」の実現を目指している。
今回の実証実験は、西尾市一色漁港と佐久島間の約8kmの海上航路において、物流ドローンを用いた日用品や食料品の輸送を行うものである。飛行レベルは3.5に設定されており、これは、無人航空機の飛行経路周辺に補助者などを配置することなく、遠隔監視のみで自動飛行を行うレベルである。
本実証実験は、1か月間という長期間にわたって実施される点で、国内における先駆的な取り組みと言えるだろう。従来のドローン物流実証実験は、短期間かつ限定的な条件下で行われることが多かった。しかし、今回の実証実験は、実際の社会実装を想定した長期間かつ多頻度な運用を行い、事業化に向けた課題を抽出することを目的としている。
この試みは、離島地域における物流の効率化、安定化に資するだけでなく、ドローン物流の社会実装に向けた重要な一歩となる可能性を秘めている。離島地域は、地理的な制約から物流コストが高く、輸送手段も限られている場合が多い。ドローンを活用することで、これらの課題を克服し、地域住民の生活利便性向上、経済活性化に貢献することが期待される。
また、本実証実験では、名古屋大学の森川教授を含むアドバイザリーボードメンバーが、技術面と事業面の両面から検証を行う。森川教授は、自動運転分野における権威であり、自動運転技術とドローン技術の融合による新たなモビリティサービスの創出にも期待が寄せられる。
さらに、実証実験期間中には、自動運転EV車「グリーンスローモビリティ」との連携も検討されている。これは、ドローンと自動運転車を組み合わせることで、よりシームレスで効率的な物流システムを構築する試みである。
ドローン物流は、世界各国で活発に研究開発が進められており、特に、中国やアメリカでは、既に一部地域で商用サービスが開始されている。日本においても、政府は、2022年12月に航空法を改正し、有人地帯におけるドローン飛行を解禁するなど、社会実装に向けた環境整備を進めている。
今回の愛知県における実証実験は、日本のドローン物流産業の発展を促すだけでなく、世界におけるドローン利活用の先導的な事例となる可能性を秘めている。今後の動向に注目し、更なる技術革新と社会実装の進展を期待したい。