地球温暖化の危機:国連報告書が示す未来と課題

国連環境計画(UNEP)が発表した最新の排出ギャップ報告書は、地球温暖化の深刻な現状を改めて浮き彫りにした。現行の政策を継続した場合、世界の平均気温は今世紀末までに最大3.1℃上昇する可能性があり、これは人類社会に壊滅的な影響をもたらす。熱波、洪水、干ばつなどの異常気象の頻発化・激甚化はもとより、食糧生産の減少、水資源の枯渇、海面上昇による居住地の喪失など、多岐にわたる脅威に直面することになる。

報告書で示された3.1℃という数字は、2021年に発表されたIPCC第6次評価報告書の予測と軌を一にするものであり、新たな知見に基づくものではない。しかし、COP26以降、各国が掲げた排出削減目標と現実の乖離が浮き彫りになっている現状において、改めて警鐘を鳴らすものと言えるだろう。

気温上昇の予測と不確実性

地球温暖化の将来予測には、常に不確実性が伴う。これは、気候システムの複雑性、社会経済シナリオの多様性、技術革新の不確実性など、様々な要因に起因する。UNEP報告書では、現行政策シナリオにおける気温上昇を最大3.1℃と予測しているが、同時に1.9~3.8℃の幅があることを示唆している。

この不確実性を理解する上で重要なのは、気候感度と呼ばれる概念である。気候感度は、大気中の二酸化炭素濃度が2倍になった場合に地球の平均気温がどれくらい上昇するかを示す指標であり、IPCC第6次評価報告書では1.5~4.5℃の範囲とされている。気候感度の値が大きければ、気温上昇も大きくなる。

温暖化の要因とフィードバックメカニズム

地球温暖化の主な要因は、人間活動による温室効果ガスの排出である。中でも二酸化炭素は、化石燃料の燃焼や森林伐採などにより大量に排出され、地球温暖化に最も大きく寄与している。

しかし、温暖化の影響は単に気温上昇にとどまらない。地球温暖化は、様々なフィードバックメカニズムを通じて、更なる温暖化を加速させる可能性がある。例えば、永久凍土の融解によるメタンの放出、森林火災の増加による二酸化炭素の排出、海氷の減少による太陽光の吸収量の増加などが挙げられる。これらのフィードバックメカニズムは、気候変動の予測をさらに複雑にしている。

国際社会の取り組みと課題

地球温暖化の脅威に対処するために、国際社会は様々な取り組みを進めている。1992年に採択された気候変動枠組条約、1997年に採択された京都議定書、そして2015年に採択されたパリ協定は、その代表的な例である。パリ協定では、世界の平均気温上昇を産業革命以前と比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力を追求するという目標が設定された。

しかし、各国の排出削減の取り組みは遅々として進んでいない。UNEP報告書は、各国が現在約束している排出削減目標を達成したとしても、気温上昇を2.6~2.8℃に抑えるのが精一杯であると指摘している。パリ協定の目標達成には、より大胆な排出削減対策が必要となる。

COP29への期待と課題

11月にアゼルバイジャンで開催されるCOP29は、パリ協定の目標達成に向けた重要な節目となる。各国は、2035年までの排出削減目標を含む新たな削減計画を提出する予定である。COP29での交渉の行方が、地球温暖化の未来を大きく左右することになるだろう。

COP29では、排出削減目標の引き上げだけでなく、気候変動への適応、損失と損害への支援、気候変動対策のための資金運用など、幅広い議題が議論される。先進国と途上国の対立、排出削減目標の設定方法、資金メカニズムの構築など、多くの課題が山積している。

持続可能な社会への転換

地球温暖化の危機を回避するためには、従来の社会経済システムを抜本的に変革し、持続可能な社会を構築する必要がある。再生可能エネルギーへの転換、省エネルギー化の推進、循環型経済の構築、持続可能な食料システムの確立など、多岐にわたる取り組みが求められる。

同時に、気候変動の影響に対する適応策も重要となる。洪水対策、干ばつ対策、熱中症対策など、地域の実情に合わせた対策を講じる必要がある。

地球温暖化は、人類社会にとって未曾有の危機である。国際社会が協力し、持続可能な社会への転換を加速させることが、地球の未来を守るために不可欠である。

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