宇宙探査の新たな地平を切り拓く:eROSITAとSKA
近年の天文学の進展は、観測技術の革新によってもたらされたと言っても過言ではない。今日、eROSITA X線望遠鏡とSquare Kilometre Array (SKA)という、二つの画期的な観測装置について考察し、今後の宇宙探査におけるその役割について展望する。
eROSITAは、ドイツのマックス・プランク地球外物理学研究所が中心となって開発したX線宇宙望遠鏡である。2019年にロシアのSpectrum-Roentgen-Gamma (SRG)ミッションに搭載され、打ち上げられた。X線は、高エネルギー光子であり、高温・高エネルギーの天体現象を解明するための重要なプローブとなる。
eROSITAは、7つの同一の望遠鏡モジュールから構成され、各モジュールは、ウォルター型と呼ばれる特殊な形状のX線鏡と、X線光子を検出するCCDセンサーを備えている。X線は、物質との相互作用が強く、通常のレンズでは屈折させられないため、斜入射を利用した反射鏡を用いる必要がある。
eROSITAの主要な科学目標は、宇宙の大規模構造の観測、銀河団の進化の解明、活動銀河核の探査などである。特に、2020年に発見された「eROSITAバブル」は、天の川銀河の活動性を示す重要な証拠として注目されている。
一方、SKAは、現在建設中の世界最大の電波干渉計である。オーストラリアと南アフリカの二つのサイトに、それぞれ数千基のアンテナが設置され、1平方キロメートルに相当する集光面積を実現する。SKAは、広大な周波数帯域をカバーし、宇宙初期から現在に至るまでの様々な天体現象を観測することができる。
電波は、X線よりもエネルギーが低く、低温・低密度な天体現象を捉えるのに適している。SKAは、宇宙における中性水素ガスの分布、銀河の形成と進化、パルサーの探査、宇宙磁場の測定など、多岐にわたる研究テーマを対象としている。
SKAの最大の特長は、その圧倒的な感度と解像度である。多数のアンテナを干渉計として組み合わせることで、従来の電波望遠鏡では不可能であった高精度な観測が可能となる。SKAは、宇宙の観測に新たな時代をもたらすことが期待されている。
eROSITAとSKAは、それぞれ異なる波長域で宇宙を観測することで、相補的な情報を提供する。X線観測は、高温・高エネルギー現象を捉え、電波観測は、低温・低密度現象を捉える。これらの観測データを組み合わせることで、宇宙の多様な側面を明らかにすることができる。
例えば、銀河団の観測において、eROSITAは、銀河団内の高温プラズマの分布や温度を測定し、SKAは、銀河団に付随する中性水素ガスの分布や運動を測定する。これらのデータから、銀河団の質量、形成史、進化過程などを総合的に理解することが可能となる。
eROSITAとSKAは、まさに現代天文学の粋を集めた観測装置であり、今後の宇宙探査における活躍が期待される。これらの観測装置によって得られる新たな知見は、宇宙の謎を解き明かし、我々の宇宙観を大きく変革する可能性を秘めている。