東京都中央区銀座1-12-4N&E BLD.7F
080-8475-6664
boueikensetsu@gmail.com

ロシア・ウクライナ戦争に関する私的見解

国をつくり、国を守る

 ロシア・ウクライナ戦争は、陸海空、宇宙、サイバー、電磁波といったあらゆる領域で戦闘が行われており、各領域における戦闘様相や戦況は刻々と変化しております。

1.陸上領域

 開戦当初、ロシア軍は機動戦を展開しましたが、その後、ウクライナ東部ドンバス地方に戦力を集中し、野戦砲を主体とした大規模な火力戦へと戦闘様相を変化させました。ウクライナ軍は、欧米諸国から供与された高機動ロケット砲システム「HIMARS(ハイマース)」などを活用し、ロシア軍の弾薬庫や補給拠点を攻撃することで、ロシア軍の継戦能力を低下させ、2022年9月には大規模な反撃に成功しております。

2.航空領域

 ロシア・ウクライナ戦争においては、「航空戦力のパラダイムシフト」が起きていると言われています。航空機による航空優勢の獲得よりも、陸上に設置された対空火器により相手方の航空機の領空への侵入を阻止する「航空拒否」が主体となっており、これは、航空戦力の高価格化と対空兵器の低価格化の非対称性が原因の一つとして挙げられています。

 (運営責任者は在職中「戦闘機不要論(航空母艦艦載機除く)」なる若干過激な思想を持っておりましたが、1つの証明になった気がしております)

3.海上領域

 海上領域においては、ウクライナ軍は地上発射型の地対艦ミサイルにより、ロシア海軍の旗艦「モスクワ」を撃沈するなどの戦果を挙げました。しかし、その射程には限界があり、ウクライナ軍は黒海全域を支配することができませんでした。

4.新領域(宇宙・サイバー・電磁波)

 宇宙、サイバー、電磁波という新領域は、陸上戦闘の支援という側面において重要な役割を果たしております。宇宙領域では、ウクライナ軍は欧米の商業衛星を活用した情報収集活動により効果的な戦闘を行っており、サイバー領域では、ロシアによる大規模なサイバー攻撃が予想されておりましたが、ウクライナは欧米諸国の支援を受けて的確な防御を行い、大きな被害は発生しておりません。電磁波領域では、ロシア軍の通信内容の盗聴や、ロシア軍幹部及び司令部の位置を探知するにあたって、有益な役割を果たしています。

ロシア・ウクライナ戦争の教訓

  • 航空戦力の役割と戦力設計の再検討の必要性:航空優勢の獲得が困難になり、航空戦力と対空火器のバランスを見直す必要性が高まっている。
  • 継戦能力の保持とハイテク兵器への依存の危険性:長期戦に備え、弾薬や装備品の備蓄、生産能力の維持が重要であり、ハイテク兵器への過度な依存は避け、総合的な戦力整備が必要である。
  • 「透明化」する戦場への対応:商業衛星やソーシャルメディアなどにより戦場が「透明化」している状況に対応するため、従来の戦術原則を見直す必要がある。

 これらの教訓は、今後の安全保障政策や防衛戦略を検討する上で重要な示唆を与えていると言えます。

令和6年6月13日

運営責任者 勝浦 悠太